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HRDコンサルタント イッチーのコンセプト講座

第13回 突然の最終回

皆さん、長らくご無沙汰しました。
今回から「問題を見つける」というテーマでお話をする予定でしたが、諸般の事情により今回で、この講座を終了することになりました。突然の最終回という事になりましたこと、ご愛読いただいた方々には、深くお詫び申し上げます。

最終回ではありますが、前回(ずいぶん前で忘れてしまったかもしれませんが・・・)の宿題から考えてみたいと思います。


前回の宿題
これは、なかなかの難問です。じっくり考えてみましょう。

前回まで本講座のテーマは
『差を考える』でした。この宿題のテーマは、まさに『差』です。

宿題について考える前に、「差」についてのウォーミングアップをしてみましょう。
ウォーミングアップの題材として時計の“精度”を取上げてみます。
ある時計が(日本、世界)標準時刻に対して1日/週/月/年単位で、どのくらい「差」が生じるかということですね。これを時計の世界では、日差/週差/月差/年差と表現します。標準時刻とは、テレビやラジオの時報とか、電話の117を回すと聞こえてくる“ただ今からXX時○○分△△秒をお知らせいたします。ピッピッピッピッピ~ン”っていうあれですね。日本国内であれば、この時刻が基準になります。

これが、“精度”(差)を考える基本です。つまり、“精度”を議論するときは、必ず基準となるものが必要だということです。この話どこかで聞いた覚えありませんか? そうです、以前、
富士山は高いといったテーマで取上げました。覚えていますか?

ウォーミングアップが済んだところで、宿題について考えてみましょう。
システム開発やプラント建設、高層マンション建設などで、担当者が苦労して算出した「見積り値」。これについて、“精度”が良いとか悪いとか、「“精度”の高い見積り値」を出すにはどうしたら良いか、とか、こんなことが話題になるわけですが、これってどうなんでしょうか?

もう、本講座の愛読者の方は、わかっちゃいましたよね。システム開発やプラント建設、高層マンション建設などで、見積り値の“精度”を評価できる基準など、あるはずがありませんよね。それぞれのプロジェクトごとに、取り巻く状況が違います。(この話は、第10回で取上げました)ですから、システム開発プロジェクトなどの見積り値に対する「(標準となる)基準」というものがあるはずがない!

それにもかかわらず、「システム開発プロジェクトの見積りの“精度”」という言い方がされます。私は、時々システム開発の見積り技術の講師も行うのですが、いつも抵抗感を持ちながら”精度”という言葉を使っています。ここだけの話、すでにお話したように、システム開発プロジェクトの見積り値に“精度”なんかないと思っています。

もう少し、突っ込んで考えてみましょう。
一般に、ソフトウェア開発において“精度”が良いとか、悪いというのは、どういう判断で言われますか?

プロジェクトが終了して(←ここがポイント)、最終の実績(実際にかかった作業量とか、期間とかの)値に対してプロジェクトの
開始時に見積もった「見積り値」との差が大きいか、小さいかによって“精度”が良いとか悪いとかいうわけです。これって、おかしいと思いませんか? だんぜん、おかいしいですよね。

それでは、なぜおかしいのでしょうか。

それは実際にかかった費用や作業期間が、基準になるはずが無いからです。 基準というのは、誰もが認める値ですよね。実際にかかった費用や作業期間が、誰もが認める基準になりますか?そのプロジェクトは、ものすごく優秀なPMとメンバーおよび環境がそろったのかもしれません、または想定外のことがたくさん起こり、PMが新型インフルエンザで寝込んでしまったかもしれない。つまり、プロジェクトの実績値というのは、色々な事情によって変わってきます。2度と同じ結果にはならない。

そんな、とらえどころのない値が「基準値」(時計でいえば標準時刻)とはいえないわけです! これが私の考えであり、コンセプト講座流の考え方です。

それでも、やっぱり見積り値は欲しいのです。見積り値が無いと計画も立てられないし予算も確保できない。そこで、コンセプト講座流に、さらに深く考えます。 そもそも、プロジェクトのような1回限りの作業を見積りする作業とは、どういうことなのか?を考えてみましょう。
見積り作業は将来を予測する作業です。
「予測する」って、ものすごく難しいことなんです。どれだけ難しいか、分かりやすい例で説明しましょう。

皆さんご存知の「天気予報」です。
天気予報は、まさに将来を予測することです。最近の天気予報、“精度”が良いですか?悪いですか?(この場合は、“精度”といっていいケースです。結果が基準になります。) この天気予報の”精度”を上げるために、毎年どれだけの国家予算を使っているか知っていますか? 今年度概算要求でおよそ620億円(平成22年度概算要求、H21年12月25日発表資料)です。昨年度はおよそ638億円。凄い額でしょ!それでも、ドンピシャ予報があたるわけではないですね。これは、気象庁を非難しているわけではありませんよ。将来を予測するということが、どれほど難しいかということを分かっていただきたいだけです。

膨大な国家予算を使った天気予報ですらこうですから、いくら経験豊富なベテランSEとはいえ、半年、1年にわたるシステム開発プロジェクトの予測が上手くできるはずがないのです。本来、神様が行なうような
“将来を予測する作業”、それが見積り作業のコンセプト講座流の理解です。

ここまでで、見積り作業とはどういうことなのか、見積もった値を“精度”という評価で考えるべきではないことをお話しました。

それじゃ、どうすればいいのよ? 見積り値はビジネス上、どうしても必要なんだ!!

私の考えは、こうです。
プロジェクトなどの誰もが認める「基準」のない見積り値は、プロジェクトなどの開始時点で、その仕事(プロジェクト)に関係する人々が、納得できる値であると。 そのような値を導き出すことが見積り作業であると。
このように考えても、見積り作業の一部には、やはり将来を予測することを含みますが、全体の作業内容のホンの一部でしかありません。

見積りに関係する人々とは、見積りをする側の人々(システム開発で言えば開発する側の人とその上司、経営者)と見積りを受け取る人(同:開発を依頼する側の人とその上司、経営者)ですね。
これらの人が、なるほど!と納得できる値が、見積り値だと考えるわけです。そのような誰もが納得できる見積り値を出すためには、見積りの
明確な前提条件を示し、それらの前提条件をもとに誰もが理解し納得できる筋道で見積り値を導きだします。

前提条件と見積り値を導く筋道とが明確であると、プロジェクト完了後に得られる実績値と見積り値を比較した時、どこで差がでたのかが明確に分かります。そして、その差が生じた原因が、見積りの筋道が悪かったのか、それとも実際の作業の進め方に問題があったのかが判断できます。

これこそが、求めるべき「見積り値」なのです。“精度”が良いとか悪いっていう話ではありません。

今回は「見積り」ということで、いつもより深くコンセプト講座流に考えてみましたが、どのようなテーマでもコンセプト講座流にちょっと深く考えることで、モノごとがスッキリ、クッキリするはずです。

本講座の第1回目にお話した内容をもう一度取上げて本講座の締めくくりとして使わせていただきます。
それでは、皆様のこれからのご活躍をお祈りしつつ、終講といたします。

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